中華人民共和国湖北省武漢市において、令和元年(2019年)12月、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されました。現在、日本を含む140カ国以上から15万人をこえる感染者が報告されていますが、そのほとんどは、人から人への感染によるものであると考えられています。
皆様が感染症予防について正しく理解した上で安心して生活していただくために、このたび、ハンドブックの内容を更新いたしました。この「新型コロナウイルス感染症 ~市民向け感染予防ハンドブック[第2版]」をご家庭での新型コロナウイルス感染症を含む呼吸器感染症予防の一助としていただければ幸いです。
本ハンドブックは、令和2(2020)年3月15日現在の情報を元に作成しており、今後、最新の情報に沿い変更することがあります。
令和2(2020)年3月16日
東北医科薬科大学病院 病院長
近藤 丘
東北医科薬科大学 医学部 感染症学教室 特任教授
賀来 満夫
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新型コロナウイルスの予防として効果的と話題になっている「次亜塩素酸水」と、アルコール消毒液とはどのような違いがあるのでしょうか?また、次亜塩素酸水の良いめん・悪いめんも勉強しましょう
そもそも次亜塩素酸水って?
厚生労働省が定める次亜塩素酸水とは、殺菌科の一種であり、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)や塩酸(いわゆる酸)を電気分解する事により作られる「次亜塩素酸」を主成分とする水溶液 の事を示します。
厳密には電気分解での製法やpH値・有効塩素濃度が厚生労働省により定められており、その違いにより強酸性・弱酸性・微酸性の次亜塩素酸水に分けられます。
漂白剤の「次亜塩素酸ナトリウム(アルカリ性)」とは違い「次亜塩素酸水」は酸性であり、食品添加物として厚生労働省により認可されておりその安全性が検証されています。
次亜塩素酸水は医療分野では「強酸性電解水」として医療機器などの消毒 に、食品分野では食品添加物の「殺菌料」として野菜や調理器具の消毒 、あるいは野菜の色を維持するために使われています。
農業分野においても、2014年に特定防除資材(特定農薬)として、2017年には有機栽培資材として農林水産大臣と環境大臣から認可・指定を受けています。つまり、次亜塩素酸水は「人体にとって安全である」 ことを公的に認められています。
アルコール消毒で効かないノロウイルスやインフルエンザウイルスの不活化に高い効果を示し 、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)、新型コロナウイルスをも不活性化、死滅させる事が予測 されており、室内のドアノブやテーブル、食器などの除菌や専用の噴霧器を利用することで空間の除菌も行えるので、新型コロナウイルスの室内での飛沫感染や接触感染のリスクを軽減することが可能といわれています。
アルコール消毒液と次亜塩素酸水の比較
厚生労働省や農林水産大臣が安全性と殺菌効果を認める次亜塩素酸水 ですが市販のアルコール消毒液とは一体どのような違いがあるか解説します。
1:刺激が少なく、肌に優しい
アルコール消毒は人体への刺激が強く、肌荒れなど起こしますが次亜塩素酸水は刺激が少なく、人体への負担もありません。人が吸い込んだり飲み込んでしまっても体内への残留性がない ので安心して使えます。
2:空間除菌ができる
アルコール消毒は刺激が強い為、空間に噴霧できませんし引火する可能性もあります。 次亜塩素酸水は刺激が少なく、専用の加湿器や噴霧器、スプレーを使用することで安心して空間除菌に活用でき ます。
3:除菌範囲が広い
アルコール消毒に対してノロウィルスなどの一部のウイルスは抵抗性があるので効果を発揮しづらいですが、次亜塩素酸水は除菌範囲が広く、速効性があるので新型コロナウイルスの予防策として十分活用することができます。
アルコール消毒と次亜塩素酸水の違いを解説しましたが、あくまでもアルコール消毒と次亜塩素酸水を比較した場合に次亜塩素酸水の方がより新型コロナウイルスへの予防策として有効性があるということであり、アルコール除菌に全く効果がないわけではありませんので誤解のないようお気を付けください。
次亜塩素酸水の種類
一口に次亜塩素酸水と言っても種類がいくつかあるのでご紹介します。
液体中に含まれる有効塩素濃度の割合やpH値によって次亜塩素酸水は3つに分類されます。
(pHは0~14まであり、pH7が中性で、pH値が低いと酸性に傾き、pH値が高いとアルカリ性になります。)
【各次亜塩素酸水 濃度 効果一覧】
以上の一覧表のように、細かく効果などが分かれておりますが、強酸性次亜塩素酸水は主に医療の現場や業務用で使用されることが多く、管理も難しいので家庭用として購入する場合には弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水を選ぶといいでしょう。
この中でも微酸性次亜塩素酸水が最も安全で殺菌効果も高い 事が厚生労働省により検証されています。
※ 最近、自宅でも作れる消毒液として次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤に含まれる成分)を水で希釈して利用する方法が紹介されていますが、次亜塩素酸ナトリウムは肌を溶かすアルカリ性なので人体には優しくありません。次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は似て非なるモノ なので間違えないように気を付けましょう。
次亜塩素酸水にもデメリットが!?
様々な除菌効果や人体への安全性が認められている次亜塩素酸水のメリットはここまでにご紹介してきましたが、次亜塩素酸水以外の消毒剤と比較した際のデメリットもあるのでご紹介します。
●汚れなどに触れると効果がなくなる●
次亜塩素酸水は殺菌すると自分はすぐに分解されてしまいます 。次亜塩素酸が菌に触れるとすぐに殺菌反応を起こすことが原因です。この事は残留しにくいことや殺菌効果がスグに現れることにつながりますが、それと同時に殺菌したい場所が汚れていたり、汚れが集中していたりすると殺菌が十分にできません。汚れや菌の成分との反応に次亜塩素酸が使われてしまうからです。
ですから次亜塩素酸水を使用して除菌したい箇所がある場合は、綺麗に掃除をしてから次亜塩素酸水を使用することで、より効果を発揮します。
●保存期間が短い●
次亜塩素酸水は次亜塩素酸ナトリウムや他の除菌消臭剤と比較して寿命が短い商品です。 業務用で用いる強酸性次亜塩素酸水(強酸性電解水)は数日で効果を失ってしまうため、保存して使うのではなく製造装置を購入し、基本的には掛け流しで用います。
一方家庭で用いる場合に製造装置を導入することは難しいため、比較的寿命の長い微酸性次亜塩素酸水(微酸性電解水)を購入して用います。適切に保存をすれば、未開封・未希釈状態で半年から1年程度の保管が可能 です。保存は日のあたらない場所冷蔵庫などお勧めします常温がで使用してください